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僕が紅に対しての想いを自覚したのは初等部最後のとある夏の日。あの日もうだるような暑さが連日のように続いていた。


「「…」」


夏休みに入り、実家への帰省が始まった人気が少ない昼下がりの寮内を琥珀と共に歩く。外はいくら暑くても室内は快適だ。
琥珀も僕もお互いに涼しい顔でただ自分たちの部屋を目指して歩いていた。

もうすぐ僕も他の生徒と同じように実家に帰省する。
寮生活とは違い、羽を伸ばすことができる実家での生活が僕は楽しみだった。


今年の夏休みは何をしようか。
涼しい場所で読んでみたかった本を全部読むのもいいし、植物を育ててみるのもありかもしれない。

本が面白かったら紅におすすめしてあげよう。
おすすめした本を僕の部屋で一緒に読むなんてのもありだ。

植物は涼しい時間に紅と一緒に水やりをしたり、野菜系を育てるならその時に収穫もしたりして、できたもので何かを作るのも楽しいだろう。


「…」


頭の中で楽しく夏休みの計画を立てていた時、ふと僕はあることに気づく。
実家に帰省すると寮生活みたいにいつでも紅を連れ出せる訳ではなかった、と。

今頭で考えていたことは全て〝紅〟が絡んでおり、実家にはいないはずの〝紅〟がいなければ成立しない案だ。


他の案を考えよう。