あり得ない。
そんなはずがない。
あくまで私は武の中では男だ。だからこそ今の対等な関係がある訳で。
男同士…つまりは同性の友達とどうして四六時中一緒に居たいと思うんだ。訳がわからなすぎる。
「…武がそんなこと思っている訳ないでしょ。風評被害だよ、武の」
はは、と私は蒼に乾いた笑い声をあげる。
「…風評被害じゃねぇよ」
するとそんな私に静かに反応したのは蒼ではなく武だった。
その呟かれた内容に思わず私は驚きで目を見開く。
「俺はお前となるべく一緒に居たいんだよ、悪いかよ」
「…は、はぁー」
私の目を真っ直ぐ見つめる武に私は思わず間の抜けた返事をしてしまう。
怒っているような表情をしている武だが、その頬は赤い。
嘘ではなく本心からそう言ったのだろう。
少なくとも今の武の表情からは嘘をついているようには到底思えない。
前回、武からそんなことを言われたことは一度もなかった。何なら別行動が当たり前で、お互いの都合が合えば一緒に行動する、ごくごく普通の友人と同じ距離感だったはずだ。
嬉しいような気恥ずかしいような武の本心に戸惑い黙っているとおかしそうに蒼が口を開いた。
「もちろん。僕も紅と四六時中一緒に居たいよ?いつも紅と同じ学年だったらよかったのにって思っているし」
絶対思っていないだろ。
何を考えているのかわからない笑顔を浮かべる蒼にすぐに私はそう思った。
とにかく笑顔が胡散臭すぎる。信用ならない。
大方この微妙に照れ臭い空気を変えようとして言った冗談といったところか。