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龍との会話を終え、次に私がやって来た場所は龍の祠がある小さな森のような場所を抜けてすぐの四神屋敷だった。これからここで当主集会が行われる予定だ。
「…紅!お前どこ行ってたんだよ!」
当主集会の時間には間に合うようにここへは来たはずだが、応接室へ入った途端、武が怒った様子で私をぎろりと睨み、声をあげた。
ええー。どしたの、急に。
「…何で怒っているの?時間には間に合ってるでしょ?」
武が一体何に怒っているのか訳がわからず首を傾げながらもいつもの席に私は座る。
隣には武、目の前には蒼と琥珀。全員ソファへ腰掛けてこちらを見ている。
どうやら最後にここへ来たのは私のようだ。
「そうだけどな、俺はお前とここへ来ようと思ってたんだよ。それを見越して蒼と琥珀も俺たちを迎えに来た。それなのに、紅、お前はいつの間にか消えているし、一向に姿は見せないし…」
「???そうなの?でも一緒に行くことは義務じゃないでしょ?怒る理由なんてある?」
「ねぇけど、でも…」
武が眉間に皺を寄せて何故自分は怒っているのか不機嫌そうに私に説明するが、その意味が全くわからず不思議そうに私は武を見つめる。すると武はバツが悪そうに私から視線を逸らした。
「つまり心配したってことだよ、紅。急に居なくなることはないんじゃない?」
私たちの会話を黙って聞いていた蒼が突然くすりと笑ってどこか棘のある言い方で私にそう言う。
…心配?
「急に居なくなるって…。任務中とかならまだしも普通の日常生活だよ?四六時中一緒に居ないといけない訳じゃない」
蒼の棘のある言い方になんでやねーん、と心の中で大きなハリセンを振り回しながらも、表向きでは冷静に私も蒼と同じようにくすりと笑ってみせる。もちろん棘ありだ。
「そうだね。でも一緒に居たいって言ったら?」
「…はあ?」
本気なのか嘘なのかわからないが、明らかに人をからかう態度で話す蒼に今度は私が武と同じように眉間に皺を寄せる番だった。