午前中の 外回りから戻って
たまたま 近くにいた 後輩の宮内に 声をかける。
「宮内、昼飯行こうよ。」
智之に 誘われた宮内は
嬉しそうに 返事をして 智之に付いてくる。
入社5年目の 宮内は 目端が利く 有能な部下だった。
営業センスもあり 智之は 目をかけていた。
「廣澤係長って 結婚して 何年ですか。」
会社近くの定食屋。
智之と 向かい合った 宮内が聞く。
「5年目だよ。宮内、結婚するの?」
先日 岡田課長と 話した時 宮内も 近くにいた。
「いえ。俺はまだ。廣澤係長 5年も 経っていて 奥さんに 飽きないですか。」
「飽きないよ。ますます 好きになるね。」
照れずに 答える智之に 宮内は ため息をつく。
「奥さん 美人だからなあ。」
と言って。
智之は おやっ、という顔で 宮内を見て
「岡田課長が 言っていただろう。奥さん 結婚してから どんどん 綺麗になるんだよ。俺が 愛情 注いでいるからね。」
と言う。
「それ 一種の のろ気ですか。」
宮内は 声を出して 笑う。
「真面目な 話しだよ。宮内も 彼女に 本気で 愛情を注いでごらん。彼女 変わるから。」
智之が言うと 宮内は 驚いた顔をする。
「何で 俺が 彼女と うまくいっていないって わかったのですか。」
「顔に 書いてあるよ。結婚を 迫られているんだろう。」
智之の言葉に 宮内は 苦笑する。
「俺 そこまで 踏み切れなくて。そんなに 好きじゃないのかな。」
「それなら 別れた方がいい。彼女 中途半端で かわいそうだよ。」
智之の 過激な言葉に 宮内は 驚いた顔をする。