絵里加を産んだ時に 安産だった麻有子。
二人目なので 早めに 入院する様に 言われていた。
いつもと違う お腹の張りを 感じたのは夕方。
まだ陣痛は 始まっていなかった。
「お母様。何となく お腹が張るので 絵里加をお願いします。」
夜になって バタバタすると
みんなに 迷惑をかけると思い
麻有子は 母に連絡する。
「すぐに行くわ。大丈夫?私が着くまで 待っていられる?」
母の 慌てた言葉に
「ゆっくりで 大丈夫です。まだ陣痛 始まってないから。」
と余裕で答えた。
母は 大急ぎで 智之のマンションに 駆け付けてくれる。
「私 病院に行ってみます。絵里加 よろしくお願いします。」
と恐縮して言う 麻有子。
「一人で大丈夫?」
と心配そうな母に、
「智くんに 連絡したから。帰りに 病院に寄ってくれるので。」
と笑顔で答える。
「絵里ちゃん。ママ べべちゃんを 迎えに行ってくるからね。お祖母ちゃまと 待っていてね。」
と 絵里加に言う 麻有子。
「絵里ちゃん いい子で 待てるよ。ママ いってらっしゃい。」
と絵里加は 言った。
通りに出て 先に来たタクシーに 乗り込む麻有子。
母と 手を繋いだ絵里加は 笑顔で 手を振ってくれる。
生まれて初めて 麻有子と離れる絵里加に
切ない思いで 手を振り返す。
出産の不安 絵里加と離れる寂しさ 家族が増える喜び。
色々な思いが 麻有子の胸に 溢れた。