帰り道 先輩が 智之に聞く。
 

「さっきの子 美人だったな。廣澤 どういう知り合いなの?」


明らかに 朝と テンションが違う智之に 先輩は気付いていた。
 

「初恋の人です。ずっと捜していた。運命の再会です。」

智之は正直に言う。


親しい先輩でもないのに。


今まで、誰にも 言ったことのない気持ちなのに。
 


「俺、すごい現場に 立ち会ったわけ?」

先輩は 笑いながら言う。


「そうです。俺の運命を 左右したんです。」

今朝突然 智之に 声を掛けてくれたから。


「そう言えば そば屋でも 縁起がよかったよな。」

思い出して言う先輩に 智之は 珍しく 声を立てて笑う。
 

「そうでした。あれが予兆ですね。」と。


不思議そうに 智之を見ている先輩は 
 

「廣澤 キャラ崩壊しているよ。」

と笑って言った。


これが 本当の俺だから。


止まっていた時間が 動き出しただけ。



俺は ずっと 麻有子を求めていた。


こんなにも強く。

でも、自覚がないまま。



心の穴は閉じて 麻有子への思いが 心を満たし 溢れていく。