ライブが終わった後の丸山さんは、数分放心状態で。なかなかその場を動こうとしなかった。
確かにすごくよかったライブだったけど。
「丸山さん」
ステージをジッと見たままの彼女に声をかけた瞬間。
フッと、視界から丸山さんが消えた。
「はっ?!ちょ、丸山さん?!」
勢いよく下に視線を落とせば、丸山さんがフロアに座り込んでいた。
「どうしよう……立てない」
「えっ」
嘘でしょ。
ライブで腰抜かすって……。
いや、生まれてはじめてのライブって言っていたし、そりゃ圧倒されるだろうけど。
ほんと、丸山さんのこういうところだよ。
あんなにうまい料理を手際よく作れちゃうくせに、突然、免疫ないところ見せてくるから。
手を貸したくなる。