〈雫久 side〉

『……相良くん、音楽ってすごいねっ』

っ?!

隣の彼女の呟きが聞こえて、目線を向ければ。

目を潤ませながらステージを真っ直ぐ見つめていて。

その表情に、俺のうっすらだった記憶がまた思い出された。

……やっぱり……似てる。
なんて。

『すっごく上手だね!大人になったらぜったい歌うお仕事した方がいいよ!』

丸山さんの今の輝いた瞳が、あの日俺の歌を初めて聴いてそう言ってくれた彼女とリンクして。

だから、唯十じゃなくて俺に、その笑顔を向けて欲しいと強く思った。

しっかりしてるように見えてどこか危なっかしくて。初対面で突然ぶっ倒れるし。

そんな丸山さんを見てると、昔出会ったその子に対して抱いた感情が蘇ってくるような感覚になる。

既視感っていうのかな。

俺の人生を変えたと言っても過言ではない、昔、数日だけ一緒に過ごした女の子。

人に自分の歌声を聴かせたのは、その時が初めてで。

いつかどこかでまた再会するようなことがあったら、お礼を言いたい。

それは、今の俺の一番の願い。