しかし、チカもよくあからさまに怒るな。

今までそんなストレートに感情をぶつけてくるヤツなんて、北桜学園には一人もいなかった。

その上、俺は大企業セレブの息子だから、それとなく腫れ物扱いだったし。

だから、愚痴八つ当たりが多少面倒くさくても…こう堂々とぶつけてくるヤツの方が好きだな。

友達って感じで、何か良い。



地下鉄。降りると、駅出口の傍に車を横付けして忠晴が迎えに来ていた。

その車の中で、そのことを思い出すとふふっと笑ってしまう。



「伶士さま、ご機嫌ですね」



ハンドルを握って運転しながらも、忠晴は後ろの席にいる俺に話し掛けてくる。



「うん。まあな」

「明日、お友達とお出かけするからですか?」

「…あ、そうそう。11時に札駅だから!」

「承知致しました。お送り致します」



と、その時。

ポケットに入っていたスマホが、ぶるぶる震えていることに気付く。

震動が長いな。着信だ。

そう思って何の心構えもなく、スマホを取り出す。



…しかし、そのスマホのウインドウを見て、心臓が口から飛び出しそうになる。



(はっ…!)