次の日。


今日も雨。


やった!!

また会えるんだ!!




「 今日も行くね 」



雨宮くんに一言送って、家を出た。





2日も連続で会えるなんて、幸せ。


傘で雨を弾く音のリズムが気持ちよく、
スキップしそうになる。




雨宮くんの家の前に着く頃。

急に、雨が弾く音が聞こえなくなった。




傘を下ろし、空を見上げる。





虹だ





あ、止んだんだ…





嫌な予感がする。









ピロリン




『 ごめん、晴れたから中止 』



雨宮くんからのメール。



ああ、やっぱり…




雨宮くんの家の方を眺めてると、
絵梨奈さんと2人で
楽しそうに出かけていく姿が見えた。




絵梨奈さんに、神様は微笑んだんだ。



今から雨宮くんに会えると期待してた分、
寂しさが一気に押し寄せてくる。




私も、雨宮くんと外でデートがしたい。

晴れの日でも、私と会って欲しい。


本人には言えない本心。




雨宮くんに会いたいよ…

私には、雨宮くんしかいないよ。




プルルルルル




こんなときに、誰……?





「 ………もしもし 」

「 あ、佐伯?野村だけど… 」

「 野村くん…… 」



「 今どこにいるの? 」

「 外にいた 」

「 あ、なんか用事あった? 」

「 ううん。たった今なくなった 」

「 ふーん、じゃあ今から会えない? 」

「 ……… 」




「 佐伯?聞いてる? 」

「 ………動物園 」

「 え?なに?動物園? 」

「 行きたい…… 」

「 うん、いいよ。動物園行こ 」



今日はいつにも増して優しい野村くん。


私のいつもと違う態度に
気を使ってくれたんだろう。




「 動物園で待っててね 」

「 ……わかった。 」



ほんとは、雨宮くんと行きたかった場所。




動物園に着く。


入口で、キョロキョロしている
野村くんの姿がいた。


私を見つけて、駆け足で来てくれた。



「 佐伯?大丈夫? 」

「 うん!急にごめんね… 」

「 いやいいけど。なんで動物園なの? 」

「 ずっと行きたかったの!! 」




野村くんの優しさを無駄にしたくなく、
わざと明るく振舞ってみた。


「 俺も行きたかった!さ、入ろ! 」



野村くんは、私の手を掴んだ。


………珍しい野村くん。




「 あ、佐伯見て!! 」

「 あー、めっちゃかわいい!!! 」

「 佐伯、写真撮ってあげるよ!! 」




私を楽しませようと
してくれてるのが伝わってくる。


野村くんのおかげで、少し傷が癒えてくる。



「 見て!ライオンがいるよ! 」

「 わあっ!!ほんとだ!!大きい… 」








「 あれ?雨宮? 」





野村くんの一言に背筋が凍りつく。






「 見て!雨宮と絵梨奈がいる! 」


野村くんが指さした先を見れば…





腕を組みながら楽しそうに話してる2人。




「 雨宮ー!! 」

野村くんが大声で叫ぶ。




やだ…

バレたくない……


野村くんの手を振り放し、
全速力でその場から逃げ出した。




「 えっ!?佐伯!? 」

野村くんが追いかけてきたのがわかる。





「 待ってってば!! 」



「 ねえ、佐伯!!! 」




すぐに腕を掴まれる。


野村くんから逃げられるわけがない。




「 ねえ、どうしたの!! 」

「 なんでもない… 」

「 なんでもなくない!泣いてるの? 」


「 …… 」




「 佐伯!何か言えよ! 」

「 言いたくないこともあるの……! 」

「 佐伯…… 」

「 こんなことになって、ごめんね… 」






「 それでも、俺は知りたいよ… 」

「 え……?? 」



「 佐伯のこと、好きなんだよ…
なんでも知りたいんだよ!
俺は、佐伯の全部知りたいくらい、好き 」



「 野村くん…… 」




「 雨宮となにかあった? 」

「 なにもない… 」

「 最近雨宮が、絵梨奈以外に
気になる人がいるって言ってた…… 」



「 えっ…… 」

「 佐伯、心当たりあるの? 」





「 ううん、なにもない。
雨宮くんとは、全然関わってない… 」


どうして嘘をついたんだろう。




「 そっか。そうだよね。
絵梨奈を傷つけるようなこと、
佐伯ならしないと思ってたから安心した 」




私の言葉を信じる野村くん。







「 佐伯は、俺のことどう思う? 」


「 ……… 」


「 ああ、困らせてごめん!忘れて…… 」



それから野村くんに家まで送ってもらった。





1人、ベッドに横になる。




絵梨奈さんといるときの雨宮くん、
あんなに幸せそうな顔するんだ。



私といる時とは全然違う。



悔しいけど、私に勝ち目なんてない。