雨が降ると、雨宮くんの家に行く。




ピーンポーン



「 はーい 」


ガチャ



「 入って 」


私の顔を見て、優しく微笑んだ。




「 寒かったでしょ。適当に座ってて 」


雨宮くんがキッチンで私の為に
温かいココアを用意してくれている。


今だけは、私の恋人。





雨宮くんを後ろから抱きしめた。



「 どうした? 」


優しい声。

なんだか安心して、泣いちゃいそう。



「 しよ…? 」

「 え…ココアいらない? 」

「 いらない…雨宮くんの愛が欲しい 」


わざと、雨宮くんのスイッチを押した。



見事にスイッチが入った雨宮くんは、
私をソファに押し倒した。


「 欲しいの? 」


返事をする代わりに、私からキスをした。





「 丁度佐伯に会いたいって思ってた 」

「 うん、私も…… 」


行為が終わった後も、雨宮くんは
こうやって、優しく抱きしめてくれる。



「 明日も雨降らないかな… 」




明日も会いたい。

明後日も会いたい。


窓の外を見ながらそう呟く。






「 動物園に行きたい 」



無理ってわかってる。




「 晴れてないと行けないじゃん 」


やっぱりな。
わかってたけど……



「 やっぱり雨の日しか会えないの? 」


「 ん~、絵梨奈ちゃん雨嫌いだし笑笑 」



絵梨奈さんに会えない日しか
私と会ってくれないんでしょう。


所詮私は2番手。



悔しい…

でもわがままを言ってしまえば、
面倒臭く思うでしょ?

そうすれば、もう会ってくれなくなるから。





「 そろそろ帰ろっかな 」


絵梨奈さんに少し嫉妬した。

私よりも愛されている、絵梨奈さんに。




「 うん。また、雨の日に 」



ガチャ


雨宮くんの家を出た。





雨宮くんの家からの帰り道。

いつも寂しい気持ちになる。

傘はあえて差さない。



頬を伝う涙を、雨でごまかすの。



ちょっとくらい泣いたって、バレないから。




ああ、今日は雨が強いな。

もう少し雨宮くんの家に居ればよかったな。




次は、いつ会えるの?

早く会いたい。




雨宮くん…

好きだよ…




「 さえきーーー? 」


後ろから、私の名前を大きく叫ぶ声がした。


振り向けば、



野村くんがいた。

彼も、わたしと同じ大学に通っている。
野村くんとは、中高と同じ学校だった。
彼とは話が合うし、気も使わなくていい
結構仲のいい異性の友達。


「 おまえ、なにやってるの? 」


野村くんが差してた黒い傘に、
私を入れてくれた。



「 風邪引くだろ! 」

「 あ、ご、ごめん… 」


「 傘持ってるのに、なんで差さねーの? 」

「 それは…… 」


「 もう、これ使っていいから!! 」


黒い傘を渡してくれた。


「 でも、野村くんは…? 」

「 俺は折りたたみ持ってるから 」


「 ありがとう… 」

「 ったく……ばかっ!! 」


野村くんは走って帰って行った。


相変わらず口は悪いけど、優しさが伝わる。