一度言葉を切り、深呼吸して、雅は話始めた。

「本当は謝らなきゃいけないのは俺なんだ。」

え?

「本当は、仕組んだんだよね…。」


どういうこと…?

「なにを…?」

「俺さ、まなが陸さん…田辺先生の事好きで、好きで、でも失恋…して。俺、それより前からまなの事好きだったから、不謹慎だけど、チャンスだと思ったんだよね。」

ちょっと切なさそうに語る雅に、うん、と相槌しかできなかった。

「でもさ、俺、気長に待とうと思って。でも、中々こっち向いてくれないし…。だから、"彼女ほしい"ってアピールしてから告った。」

「…なんで?」

「だって、まなは優しいから。」

「はい?」

「まなは優しいから!どうせ本気だって知ったら、断るでしょ。」

…そりゃ、大切な友達だったからね。

「だから、俺が仕組んだことなんだから、まなは気にしないで?」

「でも…。」

「でも、好きだから離さない。離したくない。」

「まさ…?」

「だって、少しはこっち向いてくれたっしょ♪」

そういいながらニヤッと笑った雅に不覚にもときめいてしまった。

「ははっ!顔真っ赤。とりあえず、これから覚悟してね?」

そういった雅は、今までみたいな仔犬ような顔じゃなく、ちょっと意地悪な、男の顔になっていた。

「こっの!!猫被ってたの!?」

「どっちも俺♪なんで気付かなかったのか不思議なくらい。」

「………。」

出す言葉も、ありません。

「まあ、よろしく〜♪」

「でもっ!私…。」

「待つから。」

え?

「安心して。今まで通りでいてくれたらいいから。」

「でもっ」
私、雅の事……

「いいから。今はそれだけで十分だから!」

そういいながら笑った雅はやっぱり、いつもの仔犬くんで、でも、いつもより可愛く感じたのは、秘密。



「うん。」


――朝のホーム。
学校の電車を見過ごしながら、私たちは優しいキスをした。