「朝野さんには言ってないの?」

「言えません。悲しい顔見たくないんで…」

私の言葉が静かな保健室に響く。

先生はしばらくの沈黙のあと

「お別れを言わないまま、いなくなるの?」

「はい。そのつもりです、最後まで元気な私の記憶でいて欲しいんです。」

そう、といった先生はそれ以上なにも言わなかった。

少し暑かったその日は保健室のクーラーが入っていてひんやりとした風がカーテンをゆらしていた。