「お疲れ様です。」

いつもと同じように 事務所に入る私。

いつものように 店長と純也に 迎えられて。


「麻里絵さん。昨日 花火 見ました?」

薫ちゃんが 明るく 話しかける。

「うん。見たよ。綺麗だったね。」

普通に答えたつもりなのに。


「麻里絵さん。顔が真っ赤。どうしたの?」

「あー。さては いい人と 花火に行ったんだろう?」

すかさず冷やかす店長。

チラッと 純也を見ると 俯いて 書類を見ている。


「まさか。荷物 重かったから。外 暑いのに。」

今までなら 純也も 店長と一緒に 私を 冷やかしていた。

精一杯の ポーカーフェイスが なんだか 嬉しい。


「麻里絵さんの 彼って どんな人ですか?」

「うーん。すごく優しくて。頼りになる人かな。」

薫ちゃんとの 女子トークに 軽く乗ってみると

俯いたままの 純也の顔も 赤く染まっている。


「何だよ 麻里絵ちゃん。男性恐怖症じゃないの?」

店長が 意外そうに言うから。

「いつの間にか 治りました。」

私も 澄まして答えた。