18話「自慢の彼」
☆☆☆
千絃が話してくれてのは、とても懐かしい話。思い出したくないけれど、当時の彼の気持ちが知れるのは、恥ずかしくも嬉しかった。
千絃が自分を大切に思ってくれていた事などわかっていたはずなのに、彼の1つの言葉や行動で傷ついて千絃の本当の気持ちを知ろうともしなかったのだ。
響は今までの自分の態度や気持ちがとても情けないものだと改めて思った。
「千絃がどうして剣道をやめてしまったのか?教えてくれる……?」
「………あぁ………。俺は響と稽古をした後も、実は走り込みや筋トレとかしてたんだ。今考えても何かに取り憑かれたかのように、鍛える事ばかり考えてたよ。家族にも「やりすぎだ」と止められたけど。それではダメだと焦っていた。………この1年で結果を出さないといけないと思ってた」
「…………千絃」
その当時、2人はかなりキツイ稽古をしたりトレーニングを続けていた。今、それをやれと言われたら体を壊してしまうだろうと思うほどだ。その時の響は、帰宅後すぐに食事をして、ウトウトしながら宿題をこなし、お風呂に入った後には倒れるように寝てしまう毎日だった。帰宅後に更に稽古をするなど考えられない事だった。
それを、千絃はこなしていたのだ。
毎日毎日。
響との約束を果たすために。