「嘘つき………あなたを信じた私がバカだった……私は自分の力で夢を叶えるっ!………千絃の力なんて借りない!強くなって見せるっ!………千絃なんて、嫌いよっ!!」
最後の言葉を言い切る前に響の瞳からポロッと涙が溢れた。
叫ぶように発した言葉はまるで悲鳴のようだったかもしれない。響は千絃にそんな乱暴にその言葉を投げつけると、彼に背を向けて走り去った。
わかっている。
いつもならば追いかけてきてくれる千絃は、今日は来ないという事を。
響はすぐに戻ることが出来ず、裏庭の影に踞って必死に涙を堪えようとした。けれど、我慢すればするほどに、嗚咽と共に涙が流れ続けていくのだ。
もちろん、そんな響を追いかけてきたり、抱きしめて慰めたりする人は来るはずもなかった。
それからというもの、千絃と響は全く会話をしなくなった。視線を合わせることもなく、隣を歩く事などなかった。
周りの友人達は初めは「早く仲直りしなよ」と言ってくれていたけれど、全く話そうとしない2人を見て、その話しに触れる事もなくなった。
そして、そのまま卒業をした。
千絃が体育大学に入らずに、違う大学に進学したと母親から聞いたけれど、響は全く気にしなかった。
もう、千絃の事は忘れよう。
きっと彼に甘えすぎていたのだ。
どんな障害があっても、自分で乗り越えなければいけないのだから。
響はそう強く決意し、タイムリミットまで、夢を追い、一人で強くなろうと自分を追い込んで言ったのだった。