「千絃っ!待って………」
「…………ひび…………」
制服姿の千絃は響の声を聞くと、驚きもせずにゆっくりと振り返った。響が追いかけてくるとわかっていたのだろう。
響の事を待ってくれてはいたけれど、向けられたその視線はとても冷たいものだった。
「何?」
「何って………。どうして、部活止めるの?私、千絃から何も聞いてない」
「何でお前に報告しなきゃいけないんだよ。俺が決めたことだ」
「ずっと強くなるために頑張ってきたじゃない?どうして急に剣道を止めるの?訳があるなら話して………」
無表情で反応が薄い事が多い千絃だったけれど、今のように言葉一つ一つに棘がある事も、響に冷たくする事など喧嘩をしてもなかった。響はあまりにもいつもと違う千絃の態度に戸惑いながらも、必死に彼を止めようとした。
きっと理由があるのだ。千絃は何か抱えている
そう信じていた。
けれど、彼の口から出た言葉は全く違った。