2話「四季の庭」



 元幼馴染みの突然の誘いに、響は唖然としつつ動揺してしまっていた。
 一緒に仕事とはどういう事なのか?久しぶりに合い、何故誘われるのか?不思議に思いながらも、響はまた彼は激しく睨み付けた。


 「何言ってるの?私が千絃と仕事するはずないじゃない!」
 「でも、おまえ無職なんだろ?」
 「無職でもあなたはと一緒はイヤッ!」


 響は強く腕を揺すり、彼の手から離れた。
 そうしないと、千絃の熱い手にずっと触れられているとどうにかなってしまいそうな気がしたのだ。


 「………おまえ、まだ昔の約束なんて気にしてんのか?あんな約束、意味ないだろ……」
 「……………」


 あの日の彼の手のひらは今より暖かく心地よかった。今よりも小さい手のはずなのに、自分を包んでくれるような気がしたのだ。
 大切にしていた約束。
 それなのに、その相手は「意味がない」と約束を破るのだ。昔も、今も。



 「…………あなたなんか嫌いよ」
 「あぁ、そうかよ」


 そう言うと、千絃は興味がなさそうに頭に手をやり前髪をあげた。
 太陽の日差しをうけてキラキラと光る千絃の髪はさらに茶色が鮮やかになりとても綺麗だった。地毛だというその髪は、真っ黒な髪の響にとっては憧れでしかなかった。
 早く彼から離れなければいけない。そう思っているのに、千絃から目が離せないのだ。
 そんな響の視線に気がついたのか、千絃はこちらを見てバチリと視線が合うと、ニヤリと微笑んだ。
 その瞬間に響は胸は高鳴り、そして体が熱くなるのがわかった。