「怪我人だから何もしない。それとも、して欲しかったとか?」
 「そんなはずないでしょ!?」
 「まぁ、部屋に来たら、泊まってもらって一緒のベッドで寝て、キスぐらいはさせてもらうけどな」
 「つ、付き合い初めてその日のうちにそんな事しないわよ!」
 「いい大人なんだから気にしすぎだろ?それに、おまえも俺と居たいんじゃないかと思ったんだけどな」
 「…………ずるいわ」



 千絃の部屋になんか行きたくない、と言えてしまえばよかったのかもしれないが。そんな事を言えるはずがなった。
 響だって、彼とまだ離れたくないのだ。せっかく恋人になったのだから、近づいていたいと思うのは男女同じ想いのはずだ。



 「じゃあ、決まりだな」
 

 そう言って、響の額に唇を落とすと千絃は響から離れて運転をスタートさせた。
 彼がこんなにも甘い態度を見せる事と、千絃が離れた事で寂しくなってしまった自分の感情に驚きながら、響はシートベルトをしめたのだった。