通院すると、響は傷が思ったより深かったようで、傷口を縫った。そして、千絃は骨には異常がなかったようなので打撲だろうと言われ、お互いに一安心だった。
薬を貰おうと待っていると、千絃はどこかに行ってしまった。きっと会社に報告しているのだろう。響はガーゼと包帯が当てられた左腕を見つめた。
千絃は響の怪我を見ると、自分の事のような悲しげで心配をしてくれていた。響を助けようと自分を犠牲にし、怪我を負っても助けてくれたのだ。
どうしてそこまでするの?
優しい千絃と、強引で意地悪な千絃。それは、どれも昔の千絃なのかもしれない。
じゃあ、どうして突然冷たくなり、自分から離れてしまったのか。
キスなどするのだろうか?
響は様々な彼の表情を思い浮かべては、千絃の行動の意味が全く理解出来なく、ただただ混乱してしまうのだった。