「月城さん、持ってきました!」
 「あぁ。悪いな………」


 そう言うと斉賀から大判のタオルを受け取り、それを血の滲んだハンカチの代わりに響の左腕に当てた。

 
 「千絃はどうして怪我をしたの?」
 「…………俺はいいんだ」
 「私が動きを止められなかったからなの……響さんが怪我をした瞬間には、私も斬撃の体勢に入ってしまっていて。月城さんが響さんを庇って右腕で私の剣を受けてしまったの」
 「えっ…………千絃………腕が赤く………」
 「氷持ってきたので冷やましょう」
 「………悪いな」


 斉賀は赤くなった千絃の右腕にアイスノンを当てる。すると、彼の表情が少し歪んだ。きっと痛みがあるのだろう。それなのに、千絃は響の体を支えて左腕の止血をしてくれている。

 自分の事よりも、とても心配そうにして。


 「だめだな……思ったより傷が深いのか血が止まらない。………病院に行くぞ」
 「え、そんな大事じゃないよ?」
 「いいから行くんだ」


 新しいタオルで響の左腕を縛り止血する。
 するの、千絃は響の体をひょいと持ち上げたのだ。


 「ちょっ………な、何にをしているの?!」
 「病人は静かにしてろ」


 恥ずかしさで暴れていると、呆れた顔をしてそう言う千絃は全く離す気などないようだった。斉賀は頬を赤くしながら照れた様子でこちらを見ており、響は更に恥ずかしさが増してしまう。きっと斉賀よりも顔が真っ赤になっているだろう。


 「斉賀。俺はこいつを病院に連れていくから、関さんに伝えておいてくれ」
 「わかりました。響さんをよろしくお願いします。後の事は任せてくださいっ!あ、でも、月城さんもちゃんと手当てしてもらってくださいね!」
 「………わかったよ」


 千絃はそう言うとゆっくりと歩き出した。
 平然とする彼だったが、響は会社内や駐車場では恥ずかしさから彼の胸に顔を隠してやり過ごすしかなかった。


 「どうした?痛いのか?」
 「………違う。物凄く恥ずかしいのよ」
 「なるほど。だから、耳まで真っ赤なんだな」
 「………わかってるなら下ろしてよ」
 「車に着いたらな」
 「………」


 と、言うように千絃は響を労りつつも、何故かどこか楽しそうにみえたのだった。