それでも千絃は心配したようで、斉賀と男性スタッフの1人にした。どちらもモーションキャプチャーの仕事をしたことがある者ばかりにしたのだ。

 機材を身につけた3人はそれぞれの剣をかまえた。剣と言っても模擬刀なのでほとんど心配はないはずだった。


 「よろしくお願いします」
 「いきます!」


 奇襲される響よりも斉賀達の方が緊張しているようで肩が上がっている。
 響も数人と同時に稽古をした事はあるが、それでも防具に身を包んでいたので当てられても怪我などしないので安全ではあった。
 初めての経験であったがほどよい緊張感が心地よく、そして本当の剣士同士の戦いとあってワクワクしてしまい、にやけてしまいそうだった。けれど、何事も油断は大敵だ。
 響は、目と耳と直感を研ぎ澄まして、2人を見据えた。


 まずは、斉賀が勢いよく足を踏み込みこちらにかけてくる。そのまま上段から剣を下ろしてくるので、刀でその剣を切り捨て一度相手の体制を崩す、その間に男性が体に切りかかってくるので、それを交わしつつ相手を斬りつける。斬る真似だが、もしあたっていれば重症だろう。男性はその場から離れる。そして、残った斉賀が今度は胸に突きの形で剣を向けていた。響は咄嗟に刀を立てて、相手の剣を刀の側面で流してかわす。そのまま響は、斉賀の背後から斬りすてる。

 そんな素早い剣術を次々に交わしていく。
 斉賀達も楽しくなってきたのか、いろいろな戦い方で響に向かってくる。
 響は咄嗟の判断でそれを交わしたり、時には相手にぶつかったり、蹴ったりする真似をしながらかわし、斬りつけて倒していく。それが、体が反応してくれる。思ったように動ける。刀を規則なく自由に扱える。

 それがとても楽しかった。