11話「涙の理由は」
モーションキャプターの仕事は予想以上に楽しかった。自分の動きを映像で確認することは剣道の稽古でもあったけれど、頭から足の先まで詳しく見ることはなかったので、すごいなと感動してしまっていた。
そして、意外にもアクロバティックな動きも出来たので、鍛えていて良かったなと響は改めて感じていた。
基本動作の他にも連斬や剣を投げたりするものまであり、ゲームの世界では様々な剣の形があって楽しかった。
「え、今日は斉賀さんはいないのですか?」
「あぁ。製作の方が優先になってきたから。でも、もう響さん一人でも大丈夫そうだよね」
「そうですね…….モーションキャプターの仕事は大丈夫です」
他のスタッフと話をして、今日は斉賀さんなどの主要のスタッフは別の仕事をする事になっていた。少し寂しくもあるが、みんないろいろな仕事があるのだ。自分の仕事をしっかりとやろう。そう決めていた。
「月城さんは一緒ですので、何か聞きたいことがあったら月城さんに聞いてくださいね。彼も同じなんで」
「同じ………?」
「あれ?聞いていませんでしたか?月城さんが男性キャラクター全てのモーションキャプターをやってるんですよ」
「…………初耳です」
「そうだったんですね。なので、シーンのモーションの時は一緒にやると思いますので、安心してくださいね」
そう言ってニコニコと響が安心出来るように話をしてくれるスタッフだったけれど、余計に不安になってしまったのだった。