その後は関抜きでの打ち合わせがスタートした。どんな剣技がかっこいいかという、響にとってワクワクする議題だった。そのため、前作の斉賀のモーションキャプターの映像を見る所からスタートした。
 けれど、少し気になった事があったので、隣に座っていた斉賀に、聞いて見ることにした。


 「斉賀さん…………すみません」
 「はい?何か質問ですか?」
 「いえ。その………私が来たことで……斉賀さんの仕事を取ってしまったんではないかと………」


 心配していた事とは、響が入ったことで他のスタッフの仕事を取ってしまうのではないかと思ったのだ。わざわざ聞くような事ではなかったかもしれないが、どうも気になってしまった。それならば、無理に仕事を貰う必要などないかもしれないと。
 必要な人材を会社が雇うというのは理解出来るが、どうしても不安になってしまっていた。

 すると、とても重要な事を聞かされると思っていたらしい斉賀は、キョトンとした表情の後にあっけらかんと笑った。


 「ふふふ………大丈夫ですよ!ゲーム製作もしながらモーションキャプターもやらなきゃいけなかったので、大変だったので!むしろ、助かります」
 「そうなんですか?」
 「えぇ!大学まで新体操部やってたから、動けるだろうって理由でやってたから………剣の扱いもわからなかったから大変だったの。だから、響さんが来てくれてよかったです」
 「………そう、ですか。お役に立てるように私も頑張ります」
 「楽しみにしてますっ!」


 年下なのだろうか。人懐っこくキラキラと眩しい笑顔を向けられて、響はつられて微笑んでしまう。
 自分の剣技を楽しみにしてくれる人が同じ職場にいる。それはとても心強いなと感じられた。まさしく、チームのようだと思ったのだ。

 響は、ホッとして息を吐く。
 すると、視線を感じそちらを向くと千絃がこちらを見ているのがわかった。
 そして、彼がとても優しく微笑んで響達を見ているのがわかったのだ。すぐに、いつもの無表情な千絃に戻ってしまったけれど、絶対に見間違えではないはずだ。
 響は驚きながらも、彼がそんな表情で見ていた事が嬉しかった。そして、ドキドキしてしまった。

 どうして、彼と会うと気持ちが高ぶるのだろうか。それは、きっとキスをされているからだ。
 響はそう思うようにしたのだった。