千絃がサンダルを脱ごうとし、後ろでドアが閉まる音がした。それと同時に肩を強く引かれ、体のバランスを失ってしまう。
 千絃に肩を掴まれた事を彼に支えられた事を理解した頃には、あの感触を与えられていた。



 「………っっ!!」



 抱き寄せられ、強くキスをされていたのだ。 驚いたのは一瞬で、すぐに体を動かして抵抗するけれど、体を壁に押さえつけられ、どんどんキスは深くなっていく。苦しくなっていく呼吸と、体の奥が熱くなってく感覚に襲われ、少しずつ抵抗出来なくなっていく。

 くぐもった声と、唾液が混ざる音がする。ぬるりとした感覚と、彼の香りがする。コーヒーの苦い香りだ。また、キスをされている。
 抵抗しなければいけないのに、どんどん体から力が抜けていく。
 脚がガクガクしはじめ、ついに倒れそうになると、とっさに千絃が体を支えてくれた。


 「おっと………もう立てなくなったのか?」
 「だって……」
 「キスされて気持ちよかったから、だろ?」
 「っっ………何でこんなこと………」


 涙が溜まった目で睨み付けるが、千絃はニヤリと笑って、またキスを繰り返した。
 そして、響の呼吸が乱れ始めた頃に、やっと唇を離した。