ピンポンッ
と、玄関から来客を知らせるベルが鳴った。
モニター画面を見ると、そこには悩みの種である彼の姿があった。ぶっきらぼうな顔でモニターを見ていた。
「はい………千絃……どうしたの?」
『大家が教えてくれた。ちょっと話したんだけどいいか?もしあれだった、場所変えてもいい』
「………大丈夫。今、開けるわ」
『悪いな』
響は冷静を装いながら受話器を置いた。
画面は真っ黒になる。
どうして来たの?
そう思いながらも、千絃の姿を見ると胸がドキドキしてしまう。
部屋に呼んだのは間違えだっただろうか。けれど、相手は幼馴染みだ。それが普通だと思いつつもキスの事を思い出すと体が震えてしまう。それにきっと頬も赤くなっているはずだ。
「落ち着け………落ち着け………」
玄関についた響はそう呟き、大きく息を吐いた。
そして、恐る恐るドアを開けると、いつもと変わらない表情の千絃が立っていた。
視線が合うと鼓動が早くなる。響は視線を逸らしつつ、「どうぞ。入って」と、千絃を部屋へと促した。