モヤモヤした時間を過ごすのも嫌で、それを忘れるためにも竹刀を振ったり、体を動かしたかったけれど、中庭も行きにくかった。先日、泣き顔を和歌に見られてしまったからか、彼に会うのか恥ずかしかったのだ。それに道場も誘われていたものへの返事も決まっていないので行きずらいのだ。
 思いきり竹刀も振れない日々だったため、部屋で筋トレをして過ごすしかなかった。






 そんなある日。
 とうとう、千絃の会社から連絡が来た。
 電話の相手は千絃ではなく関だった。そろそろ動画が出来そうなので見てほしいとの事だった。響は「すぐに伺います」と返事をしたけれど、動画サイトには更新されていなかったので、おかしいな、と思った。関は出来上がったらサイトに更新すると話していたからだ。
 不思議に思いながらも発表する前に教えてくれたのかもしれないと思い、急いで準備をした。

 道中は断るために台詞を考えながら向かったけれど、やはり動画がどんなものに仕上がっているのか楽しみもあった。
 複雑な心境のままに、響は再び千絃が待つ会社へと向かったのだった。





 出迎えてくれたのは関だけで、千絃の姿はなかった。彼の姿がなかった事に安心してしまう事に気づき苦笑した。あんな事があった後なのだから、どんな顔をして会えばいいのかわからなかった。
 関の後をついていくと、また同じ会議室に案内された。