7話「冷たい指と熱い唇」
千絃の指先はとても冷たい。
触れられた頬は熱さを感じていたので、とても気持ちいいなと思った。
けれど、そんな余裕は一瞬で、響は唇や舌で与えられる感覚に翻弄されていた。
響が驚いて動けなくなった隙に、千絃のキスはあっという間に深くなっていった。ピチャッと水音が耳に入ると、体が震えた。
やっと体が動くようになり、彼に抗議の声を伝えようとしたけれど、頭の後ろをガッチリと押さえられてしまい、キスから逃げることが出来なかったのだ。彼の胸を押して抵抗したけれど、全く動かないのだ。やはり彼は男の人なのだと実感してしまう。どんなに鍛えていても、敵わないのだ。
そして、目の前の幼馴染みはどうして自分に酷いことばかりするのだろうか。
無理矢理キスをして、そして大切にしていた約束を、心の拠り所になっていた約束を破ったのだから。
そんなにも、自分の事が嫌いになってしまったのだろうか。あんなにも仲がいい幼馴染みだったのに。
そんな事を思うと、響の瞳には涙が浮かんできた。彼の前で泣きたくない。弱さは見せたくない、そう思うのに1度流れた涙はなかなか止まらないものだった。
先ほどよりも力を込めて強く彼の胸を押すと、やっとの事で千絃の腕が緩みキスから開放された。