千絃と関と数名のスタッフが見守る中、剣舞を数回踊った。緊張感を感じながら、そして休みなく踊ったからだろうか。響は昨日よりもヘトヘトになってしまい、すぐに千絃から貰ったジャスミンティーを飲み干してしまった。


 「大丈夫か?」
 「あ、うん。それよりまたもう1回やった方がいい?まだ踊れるけど………」
 「いや、もう大丈夫だ。機材取るぞ」
 「わかった。」


 千絃が手際よく機材を取っていると、拍手をしながら関がこちらにゆっくりと歩いてきた。


 「漣さん、ありがとうございました!とてもいい舞でした。やはりリアルが1番感動しますね」
 「喜んでいただけてよかったです」
 「何回も踊らせてしまってすみません。ですが、しっかり撮らせて貰いましたので、数日後には完成させます。その際は、また動画を更新しますので、漣さんもみてください。それを見て、判断していただいてかまいませんので」
 「わかりました」


 響は借りたタオルで顔についた汗を拭いながら、返事をする。満足なものが撮れたからか、関はとても嬉しそうな笑みを浮かべていたので、響も安心した。


 「丁度お昼の時間になりましたね。そのまはま帰って貰って大丈夫ですので。月城、漣さんと昼食をとってきてくれないか」
 「わかりました」
 「私はこれから会議があるので、失礼させてもらいますね。今日はありがとうございました」
 「あ、いえ………私は………」


 関の提案を断ろうとしてけれど、彼とスタッフはさっさと部屋から出ていってしまった。
 残されたのは響と千絃だけだ。先ほど少し雰囲気は戻ったといえど、ギスギスしている事には変わりわないのだ。


 「ほら。いくぞ………。会社の奢りだ」
 「でも……」
 「近くに上手い冷麺出す店あるぞ」
 「………行くわ」


 好物を出されてしまっては、欲望に勝てるはずもない。
 響は彼は渋々彼の後をついていきながらも、心の中では昼食の事で頭がいっぱいになっていた。