響は逃げられないように、ドアに体を押し付けられ、そのまま社内とは思えないようなキスを繰り返した。
響が驚き口を開けてしまうと、そこからぬるりとした舌の感触を感じて、体が震えた。
体をよじったり、千絃の胸をドンドンッと叩いたりしたが、彼は止める事はなく千絃が満足するまでキスは続いた。
響の体の力が抜けてしまい、千絃の体に支えられなければ立てなくなった頃に、彼はようやく唇を離した。
「………ん………」
「ちょ………今何したの?!」
彼が体を離す間際に、響の首筋に彼の唇が落ち、チクリと痛んだ。
響は驚いて、声を上げながらそこを手で触れる。場所的に自分ではどうなっているのかはわからないのだ。
「誰にも取られないように印つけといた」
「…………も、もしかして、キスマーク………?!」
「これならインタビューで響を見たファンや声優とかからも守れるからな。お守りだ」
「こんなところにつけるなんて……」
「…………初めてつけたんだ。嬉しいだろ」
「…………次からは見えないところにして」
彼が自分の体にキスをしたという事が目に見える跡。それに憧れた事がないわけではない。
だからこそ、少し嬉しく思いつつも、見える場所はダメだと響は葛藤していた。
千絃がキスマークを落としたのは、シャツから見えるから見えないかの際どい場所だった。
コンシーラーで隠さないといけないな、と響は考えながら、キスマークを手で覆った。
「じゃあ、他の場所は今夜な」
低く甘い色気のある声で千絃が囁くと、響は胸が大きく震えるのがわかった。
やはり彼の前では弱い。いつも負けてしまうな、と思ったのだった。
(おしまい)