千絃は髪をくしゃくしゃっと乱暴にかいてくやしがっていた。
千絃と和歌が知らないうちに話しをしたんだな知って、響は少し気になってしまったけれど、千絃はあまりいい思いをしてなかったようなので、聞かないことにした。
「ねぇ、千絃?」
「うん?」
「千秋楽にも見に来てくれる?」
「あぁ………行くさ。だから、最後までやりきれ」
「うん。頑張るよ」
肩をポンポンッと叩き応援してくれる。
大切な人が見守っていてくれるというのは、力になるなと思った。
今日も舞台が始まる。響は残りのデザートのゼリーも残さず食べて、舞台へと気持ちを向けたのだった。
その後、舞台は最終日まで無事に終了した。
千秋楽まで満員御礼で、追加公演を求める声も多かったという。けれど、それは実現しなかった。
「え、響さん、もう舞台はやらないんですか……?」
「うん。このゲームの仕事続けたいし、それにやっぱり剣道にも関わっていこうかなって思って」
「そうなんですね。舞台がとても素敵だったので少し残念ですが、応援してます!」
「ありがとう、斉賀さん」