そう、千絃は自分で響が出演する舞台のチケットを購入し、始めから来てくれるつもりだったのだ。それなのに、どうして反対したのか。きっと本当にやりたい事なのか、2つの仕事を掛け持ちして大変ではないか、和歌が響の知名度だけを見ているのではないか、などいろいろ心配してくれたのではないか。響はそう思った。


 「………俺がまた嫉妬しただけだ」
 「へ………?嫉妬?どこに?千絃が………気になるっ!!」
 「………おまえ、嬉しそうだな」
 「好きな人が自分の事を嫉妬してくれるなんて、嬉しいじゃない??」
 「………おまえが良いならいいけどな………」


 千絃はため息混じりにそう言ったけれど、安心した表情にも見えた。


 「和歌はおまえの事を大切に思っていたし、想いを寄せているのもわかってた。だから、そんな男の所に行かせるのも嫌だったよ。もちろん、おまえが無理をして引き受けたんじゃないかっても思ってたけどな」
 「………千絃………」
 「まぁ、それにおまえが剣道を止めるか悩んでいた時にあいつに相談したと聞いて、本当に信頼しているだな、と思ったら悔しくて………俺が知らない響を知ってるという事になるからな。だから………」
 「ちょっ……ちょっと待って!!」


 響は彼の話を聞いて、驚き思わず話の途中だったが声を上げてしまった。
 それに、千絃も驚き目を大きくして響を見ていた。


 「和歌さんが、私が相談したって言ったの?目の事があってやめるって事を?」
 「あ、あぁ……そうだが、違うのか?」
 「うん。私、道場の人とかコーチには相談したけど、剣道に関係していない人には話さないようにしてたから……和歌さんには話した事ないんだけど………」
 「じゃあ、あいつ………目の病気に気づいてたからそんな事言ったんだな………!くそ、騙された」
 「和歌さん、さすがだね。気づいていたなんて……知らなかった」
 「はー………イライラして損した」