「今まで待っててくれたの?」
「あぁ……少し先に出待ちの集団がいる。こっちに車停めてあるから行くぞ」
「………一緒に居てもいいの?」
「………当たり前だろ。そのためにここに来た」
「………うん」
千絃は泣きそうになっている響を見て、苦笑しながら手を取って歩きだした。
久しぶりの温かい感触。そして、彼の声と背中。響はこれが夢なのではないか。そんな風にさえ思ってしまった。
「お疲れ」
「あ、ありがとう………」
いつものように千絃は響にジャスミンティーのペットボトルを手渡した。
それを見た瞬間に、我慢の限界が来てしまった。響は受け取りながら、瞳から涙がこぼれ落ちたのだ。
「………ご、ごめんなさい。緊張の糸が切れちゃったのかな………」
「響…………」
千絃は響の肩を掴み、引き寄せるととても力強く響を抱き寄せた。