36話「明け方のお風呂は」
「お疲れ様でしたっ!」
「響さん、明日もよろしくお願いします!」
「ゆっくり休んでくださいね」
初日の舞台が終わった後、SNS用の写真を撮ったり、控え室で簡単な打ち上げをした後、響は誰よりも早くその場を後にした。
舞台が終わった後はずっとソワソワしてしまった。それに気づいたのは、和歌と春だった。
「あ、もしかして恋人さん来てくれてました?」
「関係者席にはいませんでしたが……なるほど、ちゃんと来てくれたのですね」
「えっと……それはその……」
「早く帰りたいって顔に書いてますよー。いいなー、響さんの恋人は。こんな可愛くて優しい彼女がいるなんて」
「春さん!?」
「私も今日はあなたを食事に誘おうかと思ってたのすが………残念です」
「和歌さんまで………」
響をからかった2人はクスクスと笑っているが、響は自分が必死になっているのがバレてしまい、顔が赤くなってしまった。
先ほど、ステージから千絃を見た瞬間から早く彼の元へ行きたくて仕方がなかったのだ。
きっと、もう自宅に帰ってしまっただろう。ならば、すぐに追いかけたい。そんな事ばかり思ってしまう。
大切な舞台の初日が終わったばかりなのに、浮わついてしまっていいのだろうかとも思ったけれど、自分の気持ちには嘘はつけない。