響の全ての出番が終わり、舞台袖に戻ると、沢山のスタッフが小さな拍手で響を出迎えていた。
「よかったですよ!最高です」「めちゃくちゃかっこよかったです。きっと響さんのファンがまた増えるでしょうね」と、絶賛してくれたので、響は少し安心した。
けれど、最後まで気は抜けない。終わった後のお客さんの反応が気になって仕方がなかったのだ。
春の最後の台詞が終わり、幕が降りていく。響は手を合わせて祈るような思い出、客の反応を待った。すると、すぐに割れんばかりの拍手が聞こえ始めたのだ。
「………わ…………すごい………」
「響さん、幕開けるから!みんなで挨拶するよ!」
「は、はいっ!!」
スタッフに言われ、響はすぐにステージに向かった。すると、春は「響さん!はやくはやくっ!」と手招きし、春の隣の空いているステージに招いた。
響がそこに立つと同時にまた幕が上がる。すると、暗闇で見えなかった客先にも明かりがついており、響の前には沢山のお客さんが立ち上がり拍手をしている姿が飛び込んできた。
こんなにも沢山の人達が見に来てくれて、そして拍手をしてくれている。自分達が頑張って作り上げたものを称賛してくれているのだ。それがとても嬉しく、感極まってしまい目の奥がツンッとしてしまう。けれど、この景色を忘れたくない。
響がゆっくりと客席を見渡した。
すると、ある場所で響の視線が止まった。
客席の真ん中のよく見えるだろう場所に響が会いたくて仕方がなかった彼が立っていたのだ。
「…………ぁ…………千絃………」
響は一瞬にして、千絃に釘つけになってしまったのだ。
ずっとずっと会いたかった。頑張っている姿を見て欲しかった。声を聞いて、瞳を見て話しをしたかった。
響は涙が込み上げてくるのを必死に堪えたのだった。