「響さん、舞台頑張りましょうね」
「はい。絶対に成功させます」
「それは心強いです」
響は彼がここの管理人でよかったなと思った。ずっとこのマンションに住み続けているのは、彼の作った中庭から香る自然の風や彼のにこやかな挨拶、綺麗な玄関………全てが心地よかったからだろう。
そして、響の活躍を近くで応援してくれる和歌が居てくれたからだろう。
それに、響は薄々わかっていた。
和歌が響を舞台にスカウトする事で知名度を上げようとしていることを。けれど、それは仕事をするなら必要な事だとわかっていた。それを説明してくれなかった事は悲しかったけれど、彼が今まで応援してくれていたお礼をしたかった。それが本音だった。
人前に出て演技をするのは、響にとって負担は大きかった。けれど、和歌が自分を選んでくれ彼の舞台が成功するならば、頑張りたいと思ったのだ。
今は舞台の事だけに集中しよう。
響は和歌の腕に包まれながらそう決心したのだった。