「私は泣き虫で、誰にも助けを呼ぶ事も出来なくて、ひたすらに待っているだけなんです。強くなんて……ないんですよ」
「漣さん……ですが、あなたはいつも一人で立ち上がってこられたじゃないですか。それに戦う姿はとても綺麗だった……」
「辛いことを大変な事をやり遂げて戦う人はみんなかっこいいです。………けれど、それは一人で乗り越えたわけじゃないんですよ。私は一人は寂しかった。強いと言われるのは嬉しかったけれど……誰かに気づいて欲しかった」
「………それは私ではなく、あの男性という事ですね」
響は苦笑しながら、小さく頷いた。
辛い時に頭の中に居たのはずっと千絃だった。千絃が隣にいる時を思い出し微笑んだり、いなくなってしまった事を苦しく、彼に怒りを覚えたりもした。そして、再会すれば胸が高鳴った。
そんな彼はいつも響を「守ろう」としてくれていた。響の弱さを知り、先を見て守ってくれようとしていた。
そんな彼の前だけ甘えられるのが、とても幸せな存在なのだ。
再び彼の隣の居心地の良さを知ってしまい、離れてしまってから、改めて自分の中で千絃はとても大きい存在になっていたのだと気づいたのだった。