「ひび。これ見てみろ」
「え………何?」
響がパソコンの画面を覗き込んだのを確認すると、千絃が画面をクリックした。
「わぁ………すごい………」
そこに写し出されたのは壮大な自然と近未来の建物の映像だった。実在していないとわかっていても、あまりのリアルさに本当にこの世界があるのではないかと思わせてしまうほどだった。その街の外れの森に向かってどんどんアップになっていき、木々の隙間から見たこともない獣の戦っている巫女のような和服に身を包んだ男女の姿が見えた。男は短剣を両手に持っており、女は細長い刀を手にしていた。その2人はアクロバティックな剣術で獣と戦い、最後は男性が倒し、獣は光の粉になって消える。そして、その男女は剣を合わせて勝利の笑みを浮かべる。そんなCG動画だった。
「すごい………!これ、千絃が作ったの?」
「俺だけじゃないけど。まぁ、俺達の会社が作ったもので、今度ゲームを作るにあたってイメージで作った」
「本当に生き生きとしてて生きているみたい。それに、風景も幻想的で素敵だわ」
「けど、俺は満足はしてない」
「こんなにすごいのに………?」
「あぁ」
千絃はそう言うとまたゆっくりと歩き出した。響の方を一瞥したため、ついてこいという意味だと思い、響は彼の後を大人しくついていく。
すると、違う部屋に案内されたのだ。
そこは、数台のカメラとパソコンなど機材が置かれている、大きな部屋だった。
けれど、何も置かれていないスペースも多い事から何かの撮影ブースだというのが響にはわかった。
その部屋を眺めていた響だったが、千絃に「ひび」と呼ばれ、彼の方を向く。すると、千絃は普通の会話の調子のまま、とんでもない事を口にした。
「おまえ、ここであの剣舞を踊ってくれないか」
「……………………え?」
あまりに突然の要求に、響は口を開けたまま固まってしまったのだった。