「大丈夫ですか?慣れない着物で疲れてしまいましたよね」
「そんな……新鮮な気持ちになれたので、楽しかったですよ」
そう微笑んで和歌に言うと、普段ならば笑顔で返事をしてくれる彼だが、今回は何故だがジッと真剣な表情でこちらを見つめていた。
響は不思議に思い、和歌の顔を覗き込もうとする。と、和歌は響の手首を掴み、草履を鳴らしながらグイグイと歩き始めた。
「わ、和歌さん!?どうしたんですか?」
「あなたという人は………告白した男だという事をお忘れですか?」
「え………待って離してくださいっ!」
こちらを振り向きもせずに響をひっぱって歩く和歌が連れ込んだのは、彼の部屋だった。
1度も入った事もない和歌の自室。
和歌が扉を開けた瞬間に響は足を止めて逃げようとした。けれど、動きにくい着物に草履を身にまとっていたため上手く抵抗出来ずにあっという間に部屋に入れられてしまった。
「和歌さん………やめっ……」
響が声を上げようとしたけれど、それはすぐに防がれてしまう。
彼からの2回目のキス。
響は咄嗟に彼の体を強く推し、胸をドンドンと叩いた。すると、今回はすぐに体が離された。
響は彼を睨み付けようとしたが、体の力が抜けたのかずるずると床に座り込んでしまった。
そんな和歌も膝を付いてしゃがみ、響を抱きしめたのだ。