34話「新たな関係」
2人が店を出る頃には雨が降っていた。
せっかくの着物が汚れてしまうのを心配して、和歌はタクシーを呼んで帰る事を提案した。そのため、帰りは雨粒がついたタクシーに乗り、自宅まで帰った。
フッと外を見ると、千絃と再開した公園に似た小さな広場が見えてきた。そこは桜の木ではなかったが大きな木が広場を囲んでいた。
千絃は花よりも葉が、緑が好きだと言っていたな。と、思い出し
千絃は緑が好きといっていたなと思い出した。このうぐいす色の着物を見たら、彼は「似合ってる」と喜んでくれるだろうか。そんな事を思いながら、響は苦笑してしまう。その彼ともう何日も会話をしてないのだから。
「漣さん?」
「は、はいっ!?」
「到着しましたよ」
「す、すみません!あ、支払い……」
「大丈夫です。さぁ、降りましょうか」
「………ありがとうございます」
響が呆然としている間に、タクシーはマンションの前に停車し、和歌が支払いを済ませてしまったようだ。響は焦ってタクシーを降り、小雨が降る中を走り、屋根のある玄関に向かった。