状況がのみ込めないまま、女性に腕を引っ張られて、店の奥まで連れていかれてしまう。響が和歌の方を振り返ると、彼は楽しそうに手を振って見送っている。訳がわからないまま、響は彼女について行くしかなかった。


 響が案内されたのは、畳の部屋だった。
 そこには、何着もの着物が並べられていた。
 色とりどりの着物はキラキラと華やかで、まるでどこかの庭園に来ているようだった。


 「あの………ここは?」
 「着物を売るときは、お客様にここに来ていただいてゆっくりと決めていただくの。先生から、女の子を連れていくから似合う着物を見繕ってくれと頼まれましてね」
 「え…私に?着物を?」
 「えぇ。お嬢さんに会った瞬間にこれだって決めたお着物がありますの。さ、着付けをしましょう。お召し物を脱いでください」
 「あの……どうして私に着物なんか……」
 「先生が着物でお揃いデートがしたいんじゃないかしら?」
 「えぇ!?」
 「はいはい!さぁ、脱いじゃいましょうね」


 戸惑う響をよそに、女性はさっさと着付けの準備を始めてしまう。響はこの状況が理解出来ないままに、大人しく流されていくしかなかったのだった。