「ここが俺が働いているところ」


 上層階に降りると大きなフロアがあり、そこにはPCが沢山並んでいた。1人1つPCと沢山の資料に囲まれた部屋。一見、普通のオフィスに見えるけれど、よく机の上を見るとアニメのフィギュアやイラスト、ポスターなどが置いてある。響はアニメならば見る事もあったけれど、そこにあるものは知らなかった。
 知らない雰囲気のオフィス内。響はキョロキョロしながらいろいろなところを見て回るが、ここが何の会社なのかわからなかった。


 「千絃は何の仕事をしているの?」
 「ゲーム製作だよ。そこで、CGなどの動画製作してる」
 「………ゲーム……」


 千絃は自分とは全く違う仕事をしていた。
 予想外の事に、響は呆然としながらも心の奥底ではショックを受けていた。

 約束はやはり守ってはくれていなかった。
 心のどこかで、「もしかしたら続けてくれているのかもしれない」そんな期待を持っていた。けれど、違った。

 今回、仕事を一緒にやらないか、という誘いも本当は約束に繋がっているのではないか。
 そんな風に期待してしまった自分が居たのだ。


 「ゲームの仕事なんて、出来ないわよ。全く関係ないじゃない。………ふざけているなら私帰るわ」
 「ふざけてない。俺は真面目に仕事やってんだけど?」
 「………ち、違う。ふざけてるって仕事の事じゃなくて私の勧誘の事で」
 「だから、それも真面目に誘ってんだよ」

 
 決して怒っているわけではなく、真剣な口調と視線。そんな彼の姿勢にはグッとくるものがあった。
 響は何も言えずにいると、千絃は中央にあるパソコンを操作し始めた。