3話「ジャスミンティー」
「話しを聞くだけ………聞くだけよ………」
響は緊張した面持ちでそう独り呟き、昨日の公園へと向かった。
何度も行くのを止めようと思った。けれど、彼がこの公園に足を運び、誰もいない公園を見て、どう思うのか。そう考えてしまうと申し訳なく思ってしまう。彼が勝手に言って、そのまま去ってしまったのにも原因があるけれど、自分自身もしっかり断れなかった事に原因があると思ったのだ。
待ち合わせの時間より少し早くに公園付近に到着する。恐る恐る公園の様子を伺う。けれど、そこにはまだ誰もいなかった。
ホッとしつつも、彼が来るのを待つというのも緊張するな、と思いながらも公園のベンチに座り、またあの桜を見上げた。
4月の上旬にはあんなにピンクの花が咲いていたのに、今はその色は全くなくなっている。自然の力を感じながらも、その黄緑色の新しい葉
を見ると元気を貰える。この葉っぱ達で秋まで生きていくのだ。そう考えると、なんだか不思議だけれど、生命力を感じるのだ。
「生きるため、かー…………私は何がしたいんだろう。こうなる事はわかっていたのに………」
誰に問いかけるでもなく、木を見ているとそんな言葉が出てしまう。きっとそれは自分自身への問いかけだろう。
響が真剣な眼差しで見つめていると、公園内に誰かが入ってきた気配と足音を感じた。ゆっくりと視線を向けると、そこには昨日と同じ表情である軽い笑みを浮かべた千絃が立っていた。