「…………千絃………何かあったの?」
「おまえはしばらくこの家に泊まることになった」
「え………。どうして?」
千絃は心配させないように冗談でも言ってるのかと思った。だが、彼の顔は険しいままだ。
何かがあったのだと、身構えてしまう。
もうすっかり眠気も飛んでしまった。
「やられたな。………響が今日来た管理人の舞台に出るという情報がリークされた」
「え………」
響は驚きすぎて、小さな声が出ただけで固まってしまう。
まだ正式に返事もしていない、内々だけの話だったはずだ。響自身もまだやるとは決めてないのだ。
「どうしてそんな事が………」
「さぁな……誰かが情報を売ったんだろう。それに響嵩が舞台に出るという情報だけなら、舞台素人の人間なんだ、そこまで重要視されなかったかもしれないが………。今回リークされたのは、舞台の主演男優が今有名な宮田春(みやた しゅん)って男なんだ」
「あのいろんな映画やCMにも出て、主演男優賞とか受賞した!?」
「そうだ。………それもあって、この舞台はリーク情報がアップされたと同時にかなり話題になっているみたいなんだ。それにきて、響が出演となっている。女性キャストはまだ響だけだから、騒ぎになっているみたいでな。会社の方にも明日は電話やら取材の申し込みが殺到するだろうって話だ」
「………そんな………」
おろおろとする響だったけれど、千絃は少し苦笑いを浮かべて、響の頭をポンポンッと撫でた。