その日も相変わらずにモーションキャプチャーの仕事をこなしていた。いろいろなキャラクターの仕草を考えるのには苦労した。
 そのキャラクターの設定やストーリー上にどように関わりが出てくるのかをスタッフから聞いたり、見た目を知るためにイラストをしっかりみたりと撮影に入る前にやる事は沢山あった。今日は、初めてのキャラだったために念入りに打ち合わせをして仕草などをあーだこーだと言い合い、やっとの事で取りはじめたのは昼前の事だった。


 「さっきの動きよかったですよー!天然キャラなのに動く時は俊敏であっという間に敵の懐に入ってしまうところ!」
 「短剣の使い方はまだ慣れてないんですけど……ちゃんと出来ていたようで安心しました」
 「私、この女の子が推しなのでよかったですよー!」
 「そうなんですね。斉賀さんの推しは可愛い女の子なんですか」
 「そうなんですよ!」


 撮影が一旦落ち着き、斉賀とモーションの確認をしながらそんな話をしていると、撮影室の扉が開いて、関が姿を表した。


 「みんな、お疲れ様です」
 「「お疲れ様です」」


 部屋に居たスタッフ達が一斉にそちらを向き挨拶をする。すると、関の隣に誰かが立っているのに気づいた。
 細身で長身、そして女性が羨むような白い肌。そして、薄い緑色の和服に茶色の羽織り、そして綺麗なダークブラウン足袋と草履。そして黒く長い髪を結った男性の姿に釘付けになっていた。そこだけが、空気が違う、凛とした雰囲気を出しており、まるでモデルのような男性がにこやかに微笑んでいたのだ。