「な、何よ」
「、、、、、」
ジワジワ近づいてくる飛鳥が怖くて逃げようとすればもちろん許すはずもなく、両手を壁に押し付けるように捕まった
「なんで逃げた?」
真っ直ぐ獲物を捕らえる肉食動物のような目は逃げれないことを実感させる
「、、、、言わない」
「言え」
「言わない!!」
「なら言いたくなるようにしてやる」
「やっ、、、、ん!!」
噛みつくような荒々しいキスで唇を塞いでくる飛鳥
抵抗しようと顔を逸らせば片手でガッチリ固定されまた塞ぐ
顔にかかるシャワーの圧でうまく息が吸えない
「、、、、いや!!!」
飛鳥の唇に噛みつけば、血を流した飛鳥は無表情のままシャワーを止め私の首に顔を埋める
「お前なんなの?何考えてんのかさっぱり分かんねよ」
「、、、、ごめん」
「なんでいつも謝んの」
「ごめん」
「だからなんで!!!」
大声を出す飛鳥
いっそ全てをぶちまけたかった
飛鳥が好き、愛していると
でも思いとどまらせるのはやっぱり私の可愛さに言えだろう
言ってしまえば飛鳥との関係は壊れ、これまでどおりは通用しない
「お前まで俺から去っていくんだな」
「、、、、飛鳥?」
「もうお前の顔なんか見たくない。消えろ、出て行け」
私は自分の手で飛鳥を失った
再び私を襲う雨
いっそ、飛鳥との全ての記憶も綺麗に流れ落としてほしい
「どうして、こうなる事を望んだのに」
飛鳥を私から解放したかったはずなのに、どうして私は泣いているの?
心臓が張り裂けそうなほど苦しいの
「、、、、、飛鳥」
私達いつから笑ってなかった?
いつからお互いを苦しめるようになったな?
足の力が抜け、道路に座り込むと今にも張り裂けそうな心臓を押さえ込む
「好き、好きなの」
誰にも届く事はなく、雨に消される想い
「、、、、飛鳥、飛鳥、飛鳥」
こんなに愛おしいのに
もう君は私の隣にはいない
「はぁー、なんなの君」
ぼやけ始めた視界に誰かの足が入り込む
「ねぇ、聞いてる?おい、おいって」
「、、、、、、飛鳥、ごめんね」
ゆっくり伸びてくる手が飛鳥だったらいいな、なんてどこまでも最低な私は思った
洗面台にある靴を眺めながら辞めていた煙草に火をつける
苛ついた感情を幾らか落ち尽かしてくれた
「綾」
つい呟いてしまう自分にもはや呆れる
愛おしくてたまらないあいつを最も傷つけているのは俺だ
靴も履いてない、傘もないあいつを追いかけないと行けないのに体が動かないのは俺が弱いから
なんでいつもこうなる
煙草を灰皿へと押し付け、2本目に手を出そうとしてやめた
「何やってんだ、俺は」
床に座り込み壁に持たれながら頭を抱える
少しでも気を許すと涙が流れそうだ
戻れるもんなら戻りたい、綾との関係がおかしくなったあの日に
あいつが学校で人気の王子とかいう奴と付き合ったと噂で聞いた時、頭を殴られたような衝撃が襲った
本気で死ぬかと思った、だってあいつは俺のことが好きだと思っていたから
今まで感じたことのない感情は俺を滅茶苦茶に荒らし、行き場のない想いを知らない相手にぶつけた
今ならわかる、それが嫉妬や独占欲だと
そんなある日、家の前に綾が立っていた
嬉しかった、
「何してんの?」
「、、、、飛鳥」
嬉しさを隠すためにわざと素っ気なくした
顔も見たくないのかずっと俯いたまま黙っている綾に苛ついた
家の中に入ってもどこかよそよそしかった
何の用か聞けば「失恋して泣いてると思った」と
なんでお前が言う、なんで原因であるお前が
分からなかった
綾が俺の気持ちに気づいているのか
お前は別の男と付き合ってるんだろ?
もう抱かれたんだろ?
数日前に綾が男に抱かれた事は聞いていた
ならなんで俺に構う?
「あ、飛鳥?」
「なら、慰めろ」
「、、、、んん」
気がつけばベットの上で綾にキスをしていた
ただやり場のない想いを目の前にいる綾にぶつけた
「、、、あ、すか」
「黙れ」
「ん、、、んんぅ」
綾のこの声を他の男が聞いたかと思うと苛ついた
「はぁ、はぁ、、、、ゲホッゲホッ」
本当はここで辞めるつもりだった
なのに熱を帯びたあいつの瞳やどちらか分からない唾液は俺を興奮させ、理性なんてものは役に立たなかった
「飛鳥何して」
「俺のこと慰めるんだろ?」
綾は俺に腕を回した、初めて会ったあの日の晩のように
まるで俺のことを求めているように
期待させないで欲しかった
どこかで拒絶されることを望んでいたのかもしれない
「、あっ、、、、あす、か、、、、んん、」
「悪いけど初めての俺に加減なんて出来ないから」
それなのに綾は女らしい声を出して俺を煽った
もうどうでもいいや、例えそれが同情でもあいつが俺を受け入れるならそれでいい
綺麗な綾の体があらわになる度誰かが見たと思うと汚したくなった
綾の中に全部入った時綾は泣いていた
きっと後悔したんだろ、俺に抱かれたことを
「綾、俺のこと好きって言え」
「、、、、好き」
それが嘘でも、言葉が欲しかった
他の男のことなんか忘れるぐらい綾を抱いた
俺の事を体に覚え込まずように
綾はずっと泣いていた、時折ごめんねっと呟きながら
綾はいつの間にか眠り、俺は頭を撫でながら寝顔を眺める
「俺、最低」
ベッドの上で小さな白い体を傷つけた
ごめん綾
こんなに酷いことしてもどうしてもお前を求めてしまう