「それはそうだけど、いいんだよ。奈々と一緒に見なきゃ楽しくねぇし」
 笑いながら何気ない様子であづは言う。まるでそうして当然だとでも言わんばかりに。
「……俺と一緒に見ても楽しくねぇだろ。俺、あんま喋んないし」
「でも、ずっと口は開いてたぞ。あと目がキラキラしてた。お前がどんどん俺らに心開いて、感情豊かになってくの見るだけで俺は楽しいよ。それにお前、一回だけ喋ったじゃん。凄いって」
 歯を出して、心の底から楽しそうにあづは笑う。
「……あんなの見たらだれでも目くらいキラキラするし、それくらい言うだろ。それに、お前らといたからそうなったわけじゃない」
 嘘だ。
 お前らと見てたから、余計感動した。
「遊べないと思ったらしょぼくれてた奴がよく言うな」
「しょぼくれてねーし!」
「あーわかった。そういうことにしといてやるよ」
 髪をいじりながらあづは足を進める。俺は何も言わずその後を追った。
「……あづ」
 足を止めて、小声で言う。
「なんだよ?」
「……ありがとう。お前らも」
 あづを見た後、恵美と潤を交互に見て、今にも消えそうなくらい小さな声で言う。
「おう! じゃあまた近いうちに遊ぶぞ! 次はどこ行くか考えとけよな!」
「わっ」
 俺の頭を撫でて、緩んだ顔をしてあづは言う。
「あづ、俺はもうお前らとは……」
 慌てて口を紡ぐ。
 無意識のうちに、遊ばないって言おうとしていた。転院まで好きにしようと思ったのに。
 ……どうやらそう簡単に人の心は変わらないらしい。それとも、俺が怖がりなだけなのだろうか。きっと後者だ。遊ぶ資格がないとまだ思ってるから、頷けないんだろうな。
「なんだよ?」
 あづは首を傾げる。
「いや、なんでもない」
 首を振って、俺は作り笑いをした。