「か、母さん」
腕が酷く締め付けられる。
怪我してない方の腕なら痛めつけていいってか? これ、怪我してる方が自由な状態なら、俺がタオルを取れないの見越してやっただろ絶対! 性格悪!
「そのまま寝っ転がってて。お父さんがお風呂から出たらやめるから。ご飯は持ってくるから、一人で食べて。お父さんがあんたと話したがってるからその後は下に降りて来ていいけど、マスクしてきて。風邪をひいてることにするから」
耳は髪で隠れるけど、マスクをしないと、唇の怪我が見えるから、そんなことを言われた。
「そんなめんどくせえこと俺にさせるくらいなら、唇なんて怪我させなけりゃよかったじゃん」
「はー。あのね、そもそも朝、土下座をしなかったのはあんたでしょ」
「それにしたって限度が、んっ!!!」
ベルトを口の上にずらされ、脇腹を蹴られる。
痛みにのたうち回って、腹を抱えて蹲る。 怖くて、手足がガクガクと震えた。
母さんのポケットに入っていたスマフォが、突然音を立てる。
「はあ。やっぱり来たわね、電話。私は一度部屋を出るから、空我はそのまま黙ってて。多少は動いてもいいけど、大きい音だけは立てないで。あ、そうそう、これは没収ね」
俺のスマフォをズボンのポケットから抜き取って、母さんは言う。
俺は母さんの足を掴み、必死で爪を立てた。
急な反抗に驚いて、母さんはつい俺のスマフォから手を離す。スマフォは、俺の頭の近くに
音を立てて落ちた。
「離して! 離しなさい、この馬鹿息子!!」
足を左右に動かして、母さんは抗議する。俺は首を振って拒否した。
息子だなんて思ってないくせに。
通話を拒否したのか、母さんは自分のスマフォをポケットにしまった。
「はっ」
俺の口にあるベルトを首のとこまでおろして、母さんは口を開く。
「こんなことして、一体何が目的?」
母さんが奈々に『虐待をしてない』って嘘をつくのが嫌だった。
嘘をつかないと、母さんは警察に通報されて、刑務所にいく羽目になるかもしれない。それがわかっているのに、母さんが嘘をつくのは嫌だと思った。
「俺は、母さんが警察に捕まるのは嫌だ。でも、……自分がこんな目にあいつづけるのも嫌」
親が警察に捕まっていいって言う子供なんて、なかなかいない。
「空我、今自分がどれだけめちゃくちゃなこと言ってるかわかってる? さっさとどっちか選びなさいよ。私を犯罪者にするか、それとも、このまま暴力を震われ続けるか」
私を犯罪者にって、言い方が余りに意地悪だ。
「どっちもやだ」
「じゃあ何? あんたは私にどうして欲しいの?」
俺に足を掴まれたままの状態で身をかがめて、母さんは言う。
「虐待をやめて、俺と、普通の生活をして欲しい。一緒にご飯食べたり、買い物に行ったりしたい」
「はー、あんたがいるから、私はお父さんと喧嘩ばかりしてるのに? 人の幸せを壊すような子供と、仲良く買い物になんか行けるわけないでしょ」
「俺を産んだのは母さんじゃん! 俺の存在が嫌なら、降ろせばよかっただろ!!」
「私が悪いの? それに、あんたがいなかったら、赤羽くんは自殺してたんじゃない?」
「あっ」
確かに、奈々は俺がいなかったら、自殺していたのかもしれない。俺に出会うまで、あいつの環境はあまりに酷かったから。
腕が酷く締め付けられる。
怪我してない方の腕なら痛めつけていいってか? これ、怪我してる方が自由な状態なら、俺がタオルを取れないの見越してやっただろ絶対! 性格悪!
「そのまま寝っ転がってて。お父さんがお風呂から出たらやめるから。ご飯は持ってくるから、一人で食べて。お父さんがあんたと話したがってるからその後は下に降りて来ていいけど、マスクしてきて。風邪をひいてることにするから」
耳は髪で隠れるけど、マスクをしないと、唇の怪我が見えるから、そんなことを言われた。
「そんなめんどくせえこと俺にさせるくらいなら、唇なんて怪我させなけりゃよかったじゃん」
「はー。あのね、そもそも朝、土下座をしなかったのはあんたでしょ」
「それにしたって限度が、んっ!!!」
ベルトを口の上にずらされ、脇腹を蹴られる。
痛みにのたうち回って、腹を抱えて蹲る。 怖くて、手足がガクガクと震えた。
母さんのポケットに入っていたスマフォが、突然音を立てる。
「はあ。やっぱり来たわね、電話。私は一度部屋を出るから、空我はそのまま黙ってて。多少は動いてもいいけど、大きい音だけは立てないで。あ、そうそう、これは没収ね」
俺のスマフォをズボンのポケットから抜き取って、母さんは言う。
俺は母さんの足を掴み、必死で爪を立てた。
急な反抗に驚いて、母さんはつい俺のスマフォから手を離す。スマフォは、俺の頭の近くに
音を立てて落ちた。
「離して! 離しなさい、この馬鹿息子!!」
足を左右に動かして、母さんは抗議する。俺は首を振って拒否した。
息子だなんて思ってないくせに。
通話を拒否したのか、母さんは自分のスマフォをポケットにしまった。
「はっ」
俺の口にあるベルトを首のとこまでおろして、母さんは口を開く。
「こんなことして、一体何が目的?」
母さんが奈々に『虐待をしてない』って嘘をつくのが嫌だった。
嘘をつかないと、母さんは警察に通報されて、刑務所にいく羽目になるかもしれない。それがわかっているのに、母さんが嘘をつくのは嫌だと思った。
「俺は、母さんが警察に捕まるのは嫌だ。でも、……自分がこんな目にあいつづけるのも嫌」
親が警察に捕まっていいって言う子供なんて、なかなかいない。
「空我、今自分がどれだけめちゃくちゃなこと言ってるかわかってる? さっさとどっちか選びなさいよ。私を犯罪者にするか、それとも、このまま暴力を震われ続けるか」
私を犯罪者にって、言い方が余りに意地悪だ。
「どっちもやだ」
「じゃあ何? あんたは私にどうして欲しいの?」
俺に足を掴まれたままの状態で身をかがめて、母さんは言う。
「虐待をやめて、俺と、普通の生活をして欲しい。一緒にご飯食べたり、買い物に行ったりしたい」
「はー、あんたがいるから、私はお父さんと喧嘩ばかりしてるのに? 人の幸せを壊すような子供と、仲良く買い物になんか行けるわけないでしょ」
「俺を産んだのは母さんじゃん! 俺の存在が嫌なら、降ろせばよかっただろ!!」
「私が悪いの? それに、あんたがいなかったら、赤羽くんは自殺してたんじゃない?」
「あっ」
確かに、奈々は俺がいなかったら、自殺していたのかもしれない。俺に出会うまで、あいつの環境はあまりに酷かったから。