「助けられなかった。間に合わなかったんだ。この腕の中で・・・美香は死んだ。」
海を見たままの恭。

その表情は今まで見たことのない苦痛に満ちた表情だった。

「あの日」
「・・・」
「鈴をこの海で助けた日」
「・・・」
2年前の記憶がよみがえる。

「鈴は天使かと思ったよ」
急に柔らかな表情になる恭が私を見た。めったに見られない優しい笑顔。
穏やかですべてを包み込むような笑顔。
「助けられなかったことを悔やんで、生きる理由を見つけられなくなってた俺を、鈴が救ってくれたんだ。救えなかった彼女が腕の中で死んだことを何度も思いだして悔やんでた俺が、鈴の命を救うことができた。」