「でもさ」
「・・・」
まっすぐな瞳に見つめられて私は動けなくなる。
瞬きすらできないくらい。
その視線が熱い。

「もう一度チャンスが欲しい。記憶がなくたっていい。守らせてほしい。あの部屋でもう一度俺とピアノを弾きながら暮らしてほしい。幸せにする。完璧じゃないかもしれないけど、俺のありったけの力で鈴をもう一度守らせてほしい。」

嶺はまっすぐな視線と言葉を私に伝えてくれた。
私も何かこたえなくてはという思いに、焦りだす。

「返事は今じゃなくていい。ゆっくりでいい。」
「・・・私・・・」
自分でも驚くほど小さくて震えている声。
嶺も恭も私の方を見る。